山本:今回はすでにエイジングブースターの使い方をよく知る小川シェフ、萩シェフに加えて、和食の世界から西野正巳さんをお迎えしました。和の食材とエイジングブースターの相性について、ジャンルの異なる御三方からどのような意見が出てくるのか、非常に楽しみです。
西野:皆さん、よろしくお願いします。実は私もすでにエイジングブースターは店で使わせて頂いて、この装置の特性をある程度理解した上で、今日は面白そうな食材をいくつか持ってきました。
山本:西野さんからの提案食材、非常に気になりますねえ。ですが、まずは今回の舞台である「Knocking kitchen」のオーナー・小川シェフに口火を切ってもらいましょう。小川シェフ、今日はどんな食材を試してみましょうか?
小川:はい。私からは、大豆、ハチミツ、スプマンテ(スパークリングワイン)、この3つを今日は実験食材として提案したいと思います。
山本:ほお、大豆ですか。水で戻した大豆を装置に入れると?
小川:いえ、今回は装置のなかで、大豆を水と1%の塩で戻したらどうなるのか、この変化を見てみたいと思います。あとは、これまで試してこなかった食材として、蜂蜜、そして泡の多いスプマンテでも変化を確かめます。
大豆はすでに装置にかけていますので、蜂蜜とスプマンテを装置にかけている間に、大豆からさっそく食べてみましょう。
左:エイジングあり 右:なし
左:エイジングあり 右:なし
小川:表面10℃、芯温25℃、熟成時間は8時間です。装置にかけていないものと一緒に手に取って食べてみてください。
萩 :うん、明らかにまろやかな味わいになっていますね。そもそも品種が違うんじゃないかというくらいに差がある。
小川:まろやかになっているし、後味の余韻が長くなっていますね。
西野:舌に残る余韻だけではなく、残り香もしっかりしていますね。これで豆腐とか作ったら面白いかもしれない。
萩 :以前、湯葉は試したことがありますが、エイジングさせながら戻した大豆で作る豆腐は確かに面白そうですね。
小川:実は僕も萩シェフの湯葉のことが頭にあって大豆を選んでみたのですが、吸水の具合がエイジングで変わっているのかもしれません。
以前、塩漬けのマリネとソミュールのマリネをそれぞれ装置にかけてみたんですが、ソミュールの方が、浸透性が高くて味が全然違いました。
山本:いきなり面白い結果が出てきましたねえ。さて、蜂蜜とスプマンテのエイジングも終わったようです。こちらも試してみましょうか。
小川:では、まずハチミツから。0℃・15℃、風量60%で30分です。皆さん、どうでしょう?
一番右がハチミツ
萩 :大豆と同様に、強い刺激がなくなってまろやかになっていますね。
山本:これまでのエイジングブースターのセオリー通り、蜂蜜はまろやかになるという感じですね。次に注目の泡物、スプマンテはどうでしょう?
萩 :あ、泡の見た目がもう違いますよ!装置に入れた方が、泡が細かい。
山本:本当だ!泡の大きさが全然違う。ちなみに小川シェフ、これの庫内設定は?
小川:0℃・25℃で30分です。泡の見た目もそうですし、口に含んだ感じも装置に入れた方がきめ細やかですね。
萩 :これはシャンパーニュに近い、高級な泡の立ち方ですね。
以前、コンビニで買った600円のワインを装置にかけたことがありますが、その時も600円のワインが2,000円のものくらいには変化しました。
西野:私も以前、ビールを装置に入れたところ、泡が細かくなって、スッとした口あたりになりました。
だから、炭酸系はエイジングさせることで変化が大きく出るということでしょうね。
山本:エイジングブースターの作用として「食材の味わいにまろやかさが出る」というのがわかりやすい効果として確認されてきました。そのロジックとして、たんぱく質の分解が促進されること、油脂分も分解が進むことが上げられます。
大豆はたんぱく質と油脂を含んでいるので、この結果は不思議ではありません。でも、ハチミツとスプマンテはいったいなんでこうなるのでしょうかね(笑)。とにかく、料理人にとっては嬉しい変化だと思います。